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実習の概要
実習を通して
重大トラブル
素敵な出逢い
確信犯
一人での実習
入院生活
素敵な仲間
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実習の概要

 慢性期看護実習は、内科病棟で慢性疾患の患者さんを受け持ち、看護していくという実習で、大学附属病院で行われました。実習期間は4週間と最も長く、患者さんとじっくり関わることができて良いのですが、その分、求められる看護のレベルも高くなってくるという感じでした。

 実習の流れとしては、まず初日にオリエンテーションを受け、受け持ち患者さんを紹介されました。その後、各自で患者さんと関わり、看護過程を展開していく…という具合でした。今回の実習では、学生一人で患者さん一人を受け持ち、患者さんの退院などの特別な理由がない限り、4週間ずっと同じ患者さんを受け持って看護をしていきました。

 また、実習の一週目、二週目の最終日(基本的に金曜日)と病棟実習の最終日にはカンファレンスと呼ばれる話し合いが設けられていました。このカンファレンスでは、自分がどのような患者さんを受け持ち、どのような看護をしているのかを互いに発表し合い、意見交換をしました。このとき、大学から教授クラスの教官がやってきて、貴重なアドバイスをくれます(下手なことを言うと攻撃されることも?)

 それから、実習最終日には大学で「分かち合い」と呼ばれる話し合いが設けられていました。この分かち合いでは、実習を通して学んだ慢性期看護の特徴などを話し合いました(カンファレンスでは病棟単位の話し合いでしたが、分かち合いは同じ期間に実習した全学生で行われました)。

実習を通して

 この実習は、私にとって最も印象深い実習でした。とても良い経験をたくさんさせていただき、学びも多かったですし、いろんな意味で充実した実習となりました。

 4週間という長い実習期間にも関わらず、私の感想としては「もっとこの実習を続けたかった」という感じです。もともと私の専門分野である『ターミナルケア』に関係する実習だったので、もっと続けたいと思うのは当たり前なのかもしれませんが、本当に「自分の求める看護が経験できた」という感じで、期待以上に良い実習になりました。

 実は初日から受け持ち患者さんとトラブルを起こして問題になったりもしたのですが、後から振り返ると、私は素晴らしい経験ができてラッキーだと思いますし、睡眠不足で倒れそうになりながらも真剣に患者さんと向き合えたことも、患者さんの転棟に伴って私も一人だけ別の病棟へ行って実習に臨んだことも、すべてが良き学び、良き思い出となっています。

 また、この4週間は実習メンバーと共に頑張ってきたという感じで、いつの間にか仲良くなれていたことが嬉しかったです。ずっと無口なイメージでやってきた私でしたが、控え室では妙にハイテンションで話し続け…「こんなに面白い人だとは思わなかった」と口々に言われたりしました。実習が終わった後もみんなで集まって打ち上げをしたりして…最高の仲間って感じです。

…ということで、終わってしまうのが惜しいほどに素敵な4週間でした。

重大トラブル

 4週間という長い実習期間、初めての病棟各論実習、自分の専門分野『ターミナルケア』にも関係する実習…ということで、私は最初からとても気合いが入っていました。しかも、グループリーダーに抜擢された(じゃんけんで負けた)ので、ますます気合いが入っていました。しかし、私は初日から受け持ち患者さんと喧嘩をしてしまいました…

 受け持ち患者さんを決めるとき、私は「がんの告知後まもない患者さんの、精神的な苦痛、不安というものを少しでも軽減できたら…」と思い、難しいケースだろうと思いつつ、がん告知後まもない患者さんを受け持たせてもらうことにしました。

 そして、実習担当の病棟主任さんと共に患者さんのもとへ行きました。「これから4週間お願いします」と挨拶をしたのですが、雰囲気が良かったので、そのまま留まって少し話をしようと思いました。関係作りと情報収集を兼ねて…でも、それが間違いだったのです…

 受け持ち患者さんを決めるときに多少の情報はもらえるのですが、まだカルテを見ていなかった私は患者さんのことが全く分からず…話の糸口として、治療や薬のことを使ってしまいました。点滴をされていたので、「これはずっとされているんですか?」といった具合に聞いていました。

 すると、段々と患者さんが怒りだし…「そんなことはカルテに書いてあるだろう? 患者のもとへ来るのに、カルテも見ずに来るのか? そういうことはお医者さんに聞いた方が早いから、聞いてきてちょうだい。私は知りませんから。」といった具合で…私は泣きそうになりながら、ただ謝るだけでした。

 同室の患者さんや看護師さんが何とか仲裁しようと頑張ってくれたのですが、その甲斐もなく…看護師さんに「先に戻っていて」と言われ、私はナースステーションに戻りました。私が患者さんとトラブルを起こしたことは、いつの間にかナースステーション中に広まっており…看護師さんたちから「たいへんだったね」と声をかけてもらうことができました。

 「患者さんを不快にさせてしまったのだから、怒られて当然」と思っていた私は、看護師さんたちの優しい言葉に感動しました。噂で聞く看護実習は、失敗をしては看護師に怒られる…という感じでしたから。失敗を責めず、「何があったの?」と冷静に私の話を聞いてくれたので、本当に助かりました。

 その後、患者さんの意向も聞いた上で『このまま実習を続けることは、互いにとって負担となる』ということになり、翌日から受け持ち患者さんを変更してもらうことになりました。初日からトラブルを起こし、違う患者さんを受け持つことを情けなく思ったのですが、それ以上に、看護師さんたちの優しい言葉に勇気をもらうことができました。

 翌日から違う患者さんを受け持たせてもらったのですが、4週間のうちにはトラブルを起こした患者さんとも仲直りすることができ、廊下ですれ違ったときに挨拶をしたり、実習終了後には改めて挨拶に行ったりして…私は二人の患者さんを受け持っていたかのようでした。

 最初は辛いと思えた経験でしたが、今となれば素敵な思い出です。

素敵な出逢い

 初日から患者さんと喧嘩してしまった私は、二日目から違う患者さんを受け持つことになりました。しかし、その新しい受け持ち患者さんは、実はまだ入院していなくて…入院する前から受け持ち始めた珍しいケースとなりました。

 入院前のベッド・メイキングや名札の準備などから始まり、入院時のオリエンテーション、看護師さんのアナムネ(入院時に行う質問)、医師からのムンテラ(説明)など、入院前からの一通りの流れをすべて経験することができました。入院時には病名や治療方針もはっきりしておらず、患者さんはうまく現実を受け止められずに絶望的な表情をしていました。

 この患者さんは、47歳女性で、血性の胸水が溜まっていることから肺がんが疑われ、肺がんだとすれば余命6か月もないだろうという感じの患者さんでした。咳をしながら弱々しく声を出す感じで話され、息苦しいとのことでしたが、歩いたり食べたりする日常生活動作(ADL)は自立している…という状態でした。

 年齢はまだ47歳ということで、私の母と変わらないくらいですし、日常生活に支障はない…それなのに余命は半年もない…正直、信じられませんでした。

 「ただ咳が出るだけで、風邪をひいたくらいにしか見えないのに、本当に数か月のうちに死んでしまうの?」

 同情という訳ではありませんが、あまりに厳しい現実に私まで泣きたくなってきました。しかし、患者さん自身やその家族の方の悲しみ、ショックは私のそれとは比べものにならないほどに大きいでしょうから…

 「どうか少しでも心の痛みが癒されますように…残り短い人生かもしれないけれど、後悔ないように精一杯に生きてもらいたい」…そう思えてきて、「私にできることがあれば何でもしてあげたい」と心から思いました。

 それから、4週間に渡る実習をその患者さんと共に歩んできたのですが、私は精一杯に頑張ったと…患者さんの役に立つことができたと…そう信じています。

 素敵な出逢いでした。実習が終わった後も時々お見舞いに行き、楽しく笑顔でお話することができました。その後、治療がうまくいったのか、患者さんは無事に退院することができ…病気と闘いながらの日々かもしれませんが、半年を過ぎても笑顔のまま毎日を過ごされていました。

 今はもう会うこともできませんが、元気で暮らしていることを祈っています。

確信犯

 私は、今回の実習を通してようやく“インフォームド・コンセント”というもの、特にその意義について理解することができました。少し暴走したようにも思いますが、私は間違ったことをした覚えはなく、それどころか、誇りにすら思っています。

 今回の実習では、他の実習とは比べものにならないほどに徹底してインフォームド・コンセントが重視されていました…と言うのも、二段階のインフォームド・コンセントが義務づけられていたのです。

 まず、一段階目のインフォームド・コンセントとして、患者さんの状態を説明しました。「今まで何日間か受け持たさせて頂いて、あなたは今、このような状態にあって、このようなことで困っているのではないかと感じました」ということを患者さんにも分かるように(専門用語をできるだけ使わずに)説明しました。そして、こちらが思っている患者さんが困っていることと実際に患者さんが困っていることのギャップを埋められるようにしました。それから、その困っていることについて、どうしていきたいのかを患者さん自身に答えてもらいました。

 その後、患者さんの目標が達成できるように、私たちが看護計画というものを作成します。

 それから、二段階目のインフォームド・コンセントとして、看護計画を患者さんに説明しました。「以前、お話を伺ったとき、このようなことに困っていて、こうしていきたいとおっしゃっていたので、その目標を実現するための計画を私なりに考えてみました」という感じで、自分は患者さんに対して何をしていくつもりなのか、患者さんには何をしてもらいたいのかを説明し、同意を得ます。このとき、患者さんが「この計画で私の目標を達成できるとは思えない」というようなことを言われれば、もちろん計画を練り直しますことになります。

 このような二段階のインフォームド・コンセントを経て、やっと実際に患者さんに対して看護を実践することができました。急性期の患者さんにも同じ方式で対応できるとは思いませんが、この徹底したインフォームド・コンセントによって、患者さんと看護者とで目標を共有することができ、本当の意味で共に歩み、頑張ることができると痛感しました。私の理想とする看護と言えるものです。

 ただし、私は少し暴走してしまいました。まだ未熟な実習生である私たちは、実習指導をしてくれる主任さんに確認してもらったことだけを説明して良いとされていたのですが、私は勢いで余計なことまで説明してしまったのです。後から婦長さんに「そんなことまで言えちゃうなんて凄いね」なんて言われたのですが…私が説明したこと、それは…

 「治療方針を決めるのは患者さん自身です。だから、僕たちはインフォームド・コンセントといって、治療方針とかを説明して、患者さんから同意を得るってことをするんですけど、それはあくまで“同意”なんです。本当は、こういう治療がありますって、考えられる全ての治療法を紹介して、その利点とか危険性とか副作用とかも全て説明した上で、患者さん自身に治療法を“選択”してもらうべきだと思うんです。そして、中には『治療を受けない』という選択肢も、当然あるはずなんです。苦しい治療に耐えながら少しの延命を望むよりは、短くても自分の好きなように生きたい人もいて当然だと思いますから。だから、そういう選択肢も含めて、○○さんがどうしていきたいのかを決めて欲しいと思います。治療法で分からないこととかあったら、遠慮せずに聞いて下さい。そして、自分で考えて後悔しないように治療方針を選択して下さい。」ということでした。

 私は、ターミナルケア、特にホスピスに興味を持っていましたし、現在の患者さんは病気によって日常生活に支障がある訳でもなく、苦しい抗癌剤治療をしたとしても、余命は半年もないだろうと言われていたので…残りの人生を闘病にかけるのか、自分らしく楽しい余生を過ごすのか…後悔しないように選択してもらいたかったのです。

 結局、患者さんは闘病を選択しました。しかし、私の患者さんは、いろいろな選択肢があると知った上で治療方針を選択したのですから、良かったと思います。

一人での実習

 今回の実習では、私は患者さんが入院する前から受け持ちを開始したのですが、そのため、患者さんの病名や治療方針が明らかになっていない状態が続きました。このような状況における患者さんの不安などを軽減する…ということを実習できて良かったのですが、実習が半分くらい終わった頃に予想外の事態が起きました。

 なんと患者さんの病名が変わってしまい、専門的な治療をするために病棟も変わるというのです。肺がんが原発と考えられていたので、内科で治療を進めていたのですが、子宮原発の肺転移という確定診断が下り、婦人科に転棟して治療を続けることになったのです。

 (話は逸れますが、子宮が原発で肺に転移しているということは、その間にある腸などの内蔵にも転移している可能性が多分に考えられ、思っていた以上に病気が進行していることが伺われました。ただし、肺が原発のがんよりも、子宮が原発のがんの方が抗癌剤治療の効果が期待できるということで、少しは望みが出てきた…という感じでした)

 通常、患者さんが転棟してしまった場合、学生もその新しい病棟に移って実習を続ける…なんてことはできないらしいのですが、私の場合、すでに二人目の患者さんを受け持っており、これからまた三人目を受け持って…では一通りの実習(看護)を経験できませんし、新しい病棟の婦長さんと実習担当の教官が顔見知りだったらしく、特別に転棟後も同じ患者さんを受け持つことが許可されました。

 転棟したらお別れだと思っていた私にも、患者さんにも嬉しいニュースでした。「婦人科にも付いて行って実習させて頂けることになったので、これからも宜しくお願いします。」と患者さんに伝えると、「ホントに?」ととても喜んでくれました。それを見て私は、ますます嬉しくなってしまいました。

 その後、実際に婦人科に移り、一人だけで実習を進めていきました。他の学生がいないのは少し寂しかったのですが、欝陶しい(!?)指導教官もいなかったので、のびのびと実習することができて良かったです。

 また、もし看護士として働き始めても、男である私が婦人科に配属されるようなことはないと思いますから、貴重な経験ができて良かったと思います。周りはみんな女性で、一人だけ男なのは、少し違和感があり、男性用トイレがなくて困ったりもしましたが、スタッフも患者さんもみんな温かく迎えてくれたので、嬉しかったです。

入院生活

 私が慢性看護実習に臨んだのは、11月の終わりから12月にかけて…という感じでした。この時期、街はクリスマスを意識して輝きだします。それは病院の中も同じでして…

 実習中、病棟にクリスマス・ツリーを出したいからと手が空いている学生が駆り出されました。手が空いている学生と言っても、結局は全員(5人)いたような気がします(実習はたいへんですが、常に拘束されている訳ではなく、控え室で実習記録をまとめたりしている時間も多いのです…と言うか、この記録が最もたいへんなのですが)。

 なかなか大きなツリーで、少しばかり苦労しましたが、何とか組み立てることができました。それから、綿で雪を表現してみたり、電飾や鈴などのさまざまな飾りを付けたりしました。幼い頃を思い出して、何だか楽しかったです。

 実習とは関係のない話になりますが、私も入院中にクリスマスを迎えたことがあります。実習させてもらった病院とは別の大学病院でしたが、そこでは、クリスマスに大学の吹奏楽団が来て、コンサートを開催していました。私は点滴をつけたまま、車椅子に乗って聴きに行った覚えがあります。入院していても、それなりにクリスマスの楽しみ方があるということを教えられた気がします。

 病院は治療をするところではなく、病気や怪我などを抱えた人が、病気と闘いながら生活する場なのだと、再認識しました。

素敵な仲間

 今回の実習では、一緒に実習したメンバーととても仲良くなることができました。1グループ(自分を含めて)5人しかいませんでしたから、すぐに顔見知りになることができたという感じで、4週間続く実習を通して、互いの繋がりはますます強くなっていきました。

 私は性格上、あまり積極的に話をする人間ではありませんでしたし、看護では少数派の男ということで、大人しく目立たない存在でした。しかし、今回の実習からイメージが大きく変わりました。メンバーの口からは、

「こんなにおもしろい人だとは思わなかった」
「どうして今まで隠してたの? そのキャラなら人気者になれるのに」
「よくしゃべるなぁーって思ってたよ(笑)」
などなど。

 実習中、ストレス発散のために学生の控え室(教育スペースと呼ばれ、病棟の外にある部屋)で愚痴を言い捲っていたので、このようなキャラに変貌したようです(汗)。でも、途中からは、愚痴を言うためというより、単純に友達とのトークを楽しむためにしゃべり続けていたのですけど。このときは、この教育スペースでのトークが楽しくて仕方ないという感じでした。

 そのようにして、楽しくトークすること4週間…いつの間にか実習メンバー全員と仲良くなっていて、みんな互いに「ずっとこのメンバーで実習していけたら良いのにね」と話したりしていました。苦しい実習を乗り越えていくには、互いに支え合うことができる仲間が必要不可欠ですから。

 今回の実習が終わりを迎えると、メンバーのうち二人とは完全に別々の実習スケジュールになってしまい、この先、一緒に実習することはありませんでした。せっかく仲良くなったのに、このままお別れは寂しい…ということで、「打ち上げ」と称して病棟実習が終わったその日に、みんなでもんじゃ焼きを食べに行ったり、後からまた集まって焼肉を食べに行ったりしました。楽しかったですね。

 素敵な仲間と一緒に実習ができて、私は幸せでした。

先輩の餞別

 4週間に渡る実習…長いようであっという間でした(メチャ長かったと言っている人もいますけど)。私にとっては、終わってしまうのが少し寂しいと思えるくらい、素敵な4週間だったのですが、その最後の日にもまた、忘れがたい良い思い出があります。

 病棟実習を終え、指導・協力して下さった看護師さんたちにお礼を言うため、メンバー全員でナースステーションを訪れたときのこと。たいていの場合、「お疲れさまでした。これからも頑張ってね」くらいを素っ気なく言われる程度なのですが、今回は違っていて…

 私たちがナースステーションへ行くと、師長さんが、そこにいた看護師さんや医師たちに声をかけて下さり、お世話になった先輩たち一人一人から贐(はなむけ)の言葉を頂くことができました。ちょっと感動…それから、師長さんからも「また看護師として、この病棟に戻ってきて下さい」というようなことを言って頂き、贐の言葉だと分かっていながら、本気で「またここで看護をしたい」なんて思ってみたりしました。

 尊敬できる先輩に出会うことができ、ますます看護が好きになった出来事でした。


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