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母性看護実習
実習の概要
実習を通して
子守りの練習
戸惑いの面会
生命誕生の瞬間
意外なハードル
パートナー?
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実習の概要

 母性看護実習は、大学附属病院の産科病棟で2週間、民間の産婦人科病院で1週間という日程で行われました。

 2週間の病棟実習では、基本的に学生二人でペアになり、一人の患者さんを受け持つという形をとり、いわゆる看護実習という感じでした。二人ペアで受け持つのは、実習期間中に出産を迎える予定の患者さんが少なすぎて、学生一人に対して患者さん一人という形態を取れないための妥協策です。ただし、男である私は、一人で患者さんのところへ行くことが許可されなかったので、何にしても誰かとペアを組む必要があったのですが…。

 また、民間病院での実習では、外来と病棟で見学を中心に実習させて頂きました。特に受け持ち患者を決めるようなことはなく、医師や看護師について、指示されたことをするという形態でした。

 実習中、各週の終わり(基本的に金曜日)にはカンファレンスが用意されており、自分が受け持っている患者さんの紹介や看護計画などを発表し合ったり、何かテーマを設けてみんなで意見交換したりしました。

 母性看護実習では、他の領域にはない独特のケアが多く、対象となる患者さんが、必ずしも病気を持っているとは限らないという特徴があります。妊婦〜褥婦さんだけではなく、新生児に対するケアとして、沐浴や授乳なども実習しました。

実習を通して

 母性看護実習…ということで、男である自分はやりにくいだろうなと思っていたのですが、意外に普通でした。もともと看護という女性ばかりの環境にいて慣れてしまったのか、二人ペアで行動するなどの配慮(?)があったから良かったのか、その理由は定かではありませんけど。

 私はこの実習を通して、“良き父親になる方法”を学んだように思います。看護とは関係のないところですが…赤ちゃんの抱き方や沐浴、授乳などといった技術を習い、自分の子どもが生まれたら、きっと役に立つだろうと思えることが多くありました。

 また、「妊婦さんや褥婦さんは病人ではない」というようなイメージを抱いていましたが、この実習を通して、かなりイメージが変わりました。出産の前にも後にも、さまざまな悩みや葛藤、身体症状などがあり、ケアが必要なのだということを痛感しました。もし自分が結婚して、奥さんとなる人が妊娠・出産を迎えたなら、しっかり支えてあげなければ…なんてことも思ってみました。

 それから、今回の実習では貴重な経験をたくさんしました。出産を見学させてもらったり、胎盤を触らせてもらったり、内診を見学させてもらったり…普通、男である看護士が産科に配属されることは考えられないので、これらの経験をできるのは、学生時代の実習だけと言えるでしょう。実習に協力して頂いた妊婦さんたちには、少し申し訳ない気もするのですが、貴重な経験をさせてもらい、感謝しています。

子守りの練習

 母性看護実習は、産科で行われたのですが、妊婦さんや褥婦さんだけでなく、生まれたばかりの赤ちゃんも看護の対象としていました。私は、生後数日という赤ちゃんに接するのは初めてだったので、なかなかに緊張しました(人形での実習は経験済みでしたけど)。

 まず、首がすわっていない赤ちゃんの抱き方を習いました。最初、触ったら泣きだしそうな、ちょっと力を入れすぎたら壊れてしまいそうな、そんなイメージを抱いていて、赤ちゃんに触れることすら緊張してしまいました。でも、抱いてみたら意外に何ともなく…普段、猫を抱いている感覚で問題ないようで、ひとまず安心しました。

 次に、赤ちゃんの沐浴(お風呂に入れること)に挑戦しました。沐浴槽を洗い、お湯を入れ、自分の手を暖めたら、赤ちゃんの服を静かに脱がし、沐浴布をかけ…学内実習で学んだはずなのに、手順がさっぱり分かりませんでした。担当の看護師さんに呆れられながら、何とか無事に終えることができました。その後も何度か沐浴を実習させてもらう機会があり、一人でも問題なくこなせる自信がつきました。ついでに、将来、自分の子を沐浴するのを楽しみに思いました。

 それから、赤ちゃんの授乳(哺乳瓶でミルクを与えること)を実習しました。私の技術の問題か、もともとそういう子だったのかは分かりませんが、担当した子は飲みが悪く、寝ているのか起きているのか分からない状態で…延々とちゅぴちゅぴ吸っていました。私の昼休憩の時間になっても飲み終わることはなく…結局、途中から病棟の看護師さんに代わってもらいました。赤ちゃんにミルクをあげるなんて簡単だと思っていたのですが、ずっと抱き続けるのは意外に大変で、肩が凝りますし、飲ませたらゲップをさせなければならない…など、いろいろな学びがありました。

 最後に、赤ちゃんのバイタルサインについて実習しました。赤ちゃんは大人のように自分で体温計を脇に挾んで熱を計ることができませんし、脈も手首からは調べられません。いろいろと大人の場合とは違っていて、最初は戸惑いましたが、一応、何とかなった気がします(汗)。

 今までは赤ちゃんに対して抵抗と言うか、「泣いたらどうしよう?」とか「怪我させたらどうしよう?」とかの不安が先行していたのですが、この実習を通して、「かわいい」とか「自分の子どもが欲しい」といった感情に変わりました。良い経験でした。

戸惑いの面会

 大学病院での母性看護実習も終わりに近づいた頃、私の受け持ち患者さんは帝王切開術による出産をしました。この患者さんの子どもは、もともと発育遅延を指摘されており、患者さんは「子どもが無事に生まれるかが心配」とよく仰っていました。そして、実際に生まれてきた赤ちゃんは、1270gと予想以上に小さく、当分の間はNICU(新生児集中治療室)に入ることになりました。

 帝王切開の翌日、赤ちゃんとお母さん・お父さんとの初めての面会があり、私とペアの学生も面会に付き添わせて頂きました。帝王切開の翌日ということで、お母さんは車椅子に乗り、苦しそうに面会に向かいました。

 NICUにある保育器の中に赤ちゃんはいました。本当に小さな、痩せた赤ちゃんでした。標準と言われる赤ちゃんは体重3000gくらいですから、その半分以下の発育しかできていないことになります。一生懸命に生きようとしている…という感じです。

 赤ちゃんと対面したお母さんは最初のうち、「かわいそうだから…」と言って赤ちゃんに触れることにも戸惑いを覚えているようでした。その一方で、お父さんの方は「かわいいだろう? なぁ? かわいい。」と何度も仰っていました。

 何か…うまく言葉にはできませんが、心に訴えかけるものを感じた気がします。

生命誕生の瞬間

 母性看護実習における最も貴重な経験の一つ…それは、出産の見学です。3週間という短い期間で9人ほどの学生が実習するので、必ずしも全員が見学できるとは限らないのですが、運良く私の実習グループでは全員が見学することができました。特に私は男なので、たとえ出産の機会に巡り合っても、産婦さんから拒否されることを考えられる訳で…見学させてもらえて良かったです。

 私は民間の産婦人科病院での実習中に出産を見学しました。午前中、外来で院長に付いて見学実習していたのですが、そのときに診察した方が午後になって産気づいた…という感じでした。学生の控え室でリラックスしていると、お産が始まったという連絡を受け、すぐに分娩室に駆けて行きました。

 分娩室に着くと、すでにお産の真っ最中でした。必死になっている産婦さんに挨拶をしている余裕などなく、師長さんに指示されるままに産婦さんの足元の方へ…後はスタッフの方々を邪魔しないように覗き見るという感じでした。

 産婦さんは必死の形相…看護師の一人は分娩台の上に乗って産婦さんのお腹を圧迫しているし、他のスタッフも忙しく動き回る…出産の大変さを物語る風景が広がりました。

 見学を始めてしばらくすると、赤ちゃんの頭が見えるようになってきました。そして、ある程度まで出てくると産婦さんの会陰をハサミでジョキッと切りました(いわゆる会陰切開です)。その瞬間、「ギャー」と産婦さんの叫び声…ちょっと引いてしまいました。『陣痛のあまりの痛さに会陰切開の痛みは感じない』と聞いていたのですが…やはり痛いようですね(汗)。

 その後、順調に赤ちゃんは生まれました。見学開始から30分くらいの出来事です。初産婦だったのですが、何でもいきみ方が上手だったらしく、妙に順調な出産になりまして…『何時間もの壮絶な格闘の末、やっと生むことができて感動する』なんてことを想像していた私は、正直ちょっと腑抜けた感じになりました。「あれ、もう終わったの?」といった感じです。

 赤ちゃんが生まれた後は、赤ちゃんのケアを見学させてもらいました。すぐに沐浴し、保温しつつ吸引したりして…なかなか泣かなかったので、少し心配しましたが、何も問題ないようで安心しました。

 最後に再び分娩室に戻り、産婦さんにお礼を言いました。これで、出産の見学は終わりです。意外に呆気なくて…でも、壮絶なことは分かりました。

 ちなみに、どうでも良いことですが、私も分娩台に乗ってみました。足も台にかけ…他の学生の前ということもあり、恥ずかしかったのですが、貴重な経験ができて良かったです。また、最近では立ち合い分娩というものも普及してきましたが、その場合でも男性は産婦さんの近くにいるのが普通で、今回の見学のように足元側から立ち合うことはできないそうで…これも看護学生だからこそできる経験と言えそうです。

意外なハードル

 母性看護実習…お産に関する領域では、基本的に男性が働くことはありません(産婦人科医は除く)。しかし、学生は一通りの領域を学ばなければならないということで…ちょっと無理して産婦人科領域の看護を展開していきます。

 今回の実習は学生が二人ペアで行ったので助かったところも大きいのですが、例えば、乳房マッサージというケアがあります。女性である看護師や助産師がするなら良いとして、男性がこれをしたらセクハラで訴えられてもおかしくないでしょう。陰部洗浄やら剃毛やら…内診の介助にしても、男性がしたら怪しいことだらけです。そのようなケアを男性にされる女性はもちろんのこと、旦那さんも不快に思うことでしょう(相手が学生だと許容できるところもあると思いますが…もしオヤジだったら、拒否されるのでは…?)。

…と言うことで、歓迎されない男性は産婦人科領域で働きません(働けません)。産婦人科医や薬剤師などには男性もいますが、私が実習した病院では、男性が単独で病室を訪れることは禁止されているようでした。

 このような環境で行われる母性看護実習…ある程度は覚悟していたのですが、予想していなかったところで『トイレ』が曲者でした。なんと産婦人科には男性用トイレがないのです。大学病院の産科病棟にも、民間の産婦人科病院にも、男性用トイレはありませんでした。困ったものです。大学病院では、他の病棟のトイレへ行くとか、ナースステーションのトイレを借りるとかで何とかなったのですが、産婦人科病院ではそうもいかず…

 結局、患者さんが利用している女性用トイレを使わせてもらうことになりました。普通なら、男である私が女性用トイレに入って行けば、変態扱いされかねないでしょうけど…。ちゃんと許可を得ているとは言え、やはり誰かに会わないかとビクビクしてしまいました。何とも…。

パートナー?

 母性看護実習は、学生2人がペアを組んで1人の患者さんを受け持つという形態だったのですが、私の実習グループは9人…ということで、1人だけは学生1人で1人の患者さんを受け持つことになりました。

 男である私は、必ず誰かとペアを組まなければならないということで、優先的に受け持ち患者さんを選択できたのですが…『ペアの相手を見て受け持ち患者さんを決めた』と思われるのがイヤで、敢えて仲の良い友達とはペアにならないようにしました。すると…その仲の良い友達が1人で患者さんを受け持つことになってしまいました。

 そのことに申し訳なさを感じた私は、友達が孤立しないように声をかけてみたり、実習が終わった後に居残って記録を手伝ったりしていました。みんなが昼休憩に行っても指導教官と話し合っている友達を見て、1人だけ残して行くこともできず、話し合いが終わるのを待って一緒に昼食をとったりもしました。このことは、2つの両極端な結果を導いたりして…。

 まず、良い結果として、記録を手伝った友達と仲良くなることができました。私は普段、女の子と2人きりというシチュエーションを避けるのですが、今回は自然な形で2人きりになって…最初は「大変そうだから」という理由で一緒に記録を書いていたのですが、いつの間にか「一緒にいると楽しいから」という理由に変わっていました。実習が終わった後に友達と愚痴や笑い話をするのが楽しみで、実習中もワクワクしていたほどです。

 次に、悪い方の結果ですが、私とペアを組んでいた子が実習最終日に涙を流していました。「自分は患者さんのために何もできなかった」ということで泣いていたらしいのですが、私の行動も原因になっていたらしく、「自分とペアなのに違う子とばかり…」とか「自分だけ先に帰って良いのかな…」などと辛い思いをしていたらしいです。申し訳ないことをしました。

 実習グループにおける人間関係には注意したいものです(汗)。


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