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看護師の仕事

2003/11/04(Tue)

 私たち看護師は、患者様を援助する専門家です。「援助の専門家は、さまざまな対人関係上の課題や要求に対処する高度な対人関係能力やコミュニケーション能力を駆使して関わり続け、癒し続ける必要がある」と言われます。私たちはこのことを決して忘れてはいけません。

 看護とは少し違いますが、次のような話を聞いたことがあります。ホテルの接客スタッフがお客様に「パンにしますか?ライスにしますか?」と尋ねたとき、お客様が「ご飯を下さい」と答えると、「ご飯ですね」と確認すると言います。お客様が「ご飯」と答えたのに対して、「ライスですね」と返すと、お客様は否定された気持ちになる、そのため、お客様に不快な感情を抱かせないように配慮しているのだと言います。私は、このような配慮は看護でもとても大事だと思います。ほんの些細な表現の違いであっても、相手に与える印象はかなり違うものだと思います。看護師は患者様を癒す存在でありますが、現状では患者様に不快な感情を抱かせてしまっていることも少なくないと思います。私自身の経験でも、入院中には看護師の言動に苛立つことが多々ありました。この現状を、私たちは変えていかなければなりません。



 私たち看護師は、患者様の“心”に目を向けなければなりません。看護師になった頃の私は、患者様の言動に苛立つことがありました。例えば、ちょっとしたことでナースコールをしてくる患者様に対して、「この忙しいのに、そんなことでわざわざ呼ばないでよ。」といった具合にイライラしました。しかし、これは明らかに間違っています。私たちにとってはちょっとしたことであっても、患者様にとってはちょっとしたことではないから訴えているのです。そして、なぜ患者様が看護師の忙しさを考えなければならないのでしょうか。患者様に対して、看護師の忙しさを考えて欲しいなどと考えているとすれば、それは、看護師の傲慢というものです。

 自分が入院していたときにも経験したことですが、看護師となった今、同僚である看護師の言動に苛立つことがあります。看護師が患者様の感情を否定するなどということは、絶対にあってはなりません。たとえそれが心因性のものであっても、患者様の訴えを否定してはなりません。実際にあった話です。私が入院中、「痛くて我慢できないので何とかして下さい」とナースコールしたとき、「そう?そんなに痛そうな顔してないけど、我慢できない?」なんて言った愚かな看護師がいた。ある看護師の話…呼吸苦を訴える患者様に対して「SpO2が99%もあるよ。私より元気じゃん。大丈夫、大丈夫。」なんて言い放った。

 もし、同じような失礼を患者様に対して行っている看護師がいたら、今すぐに改めてもらいたい。もしできないのであれば、すぐに看護師をやめてもらいたい。どんなに器質的に問題がなくても、どんなに他覚的に問題がなくても、どんなに心因性である確信があっても、患者様の訴えを否定していい理由にはなりません。私はそのような行為が絶対に許せません。

 例えば、呼吸苦を訴えてベッド上に寝たままの患者様がいたとします。器質的には問題が見つかりません。ここで、「患者はウソをついている」とか「患者はなまけているだけだ」などと決め付けるのは愚かな看護師がすること。もし仮に、患者様の訴えが心因性であると思うのであれば、「なぜ患者様はそのように訴えたのだろう」とアセスメントするのが本来あるべき看護師の姿勢でしょう。



 ここで事例を挙げたいと思います。食事摂取量が少ない患者様がいます。放置しておくと全く食事に手をつけません。この場合、看護師は「食事摂取量が少ない」ということを看護問題として挙げるでしょう。ここで忘れてはいけないことがあります。私たちは看護問題に介入する訳ではありません。その問題の、関連因子(原因)に介入していくのです。

 看護問題自体に介入する場合、この事例では食事摂取量を増やすことが目標となり、「食事を食べなくてはいけない理由を説明したり、ひどい看護師になれば嫌がる患者様に無理やり食べさせて摂取量を確保したりするでしょう。信じられないことですが、こんな看護師が実際にいます。でも、私にはそれが看護だとは到底思えません。そんなことは援助の専門家である看護師でなくても誰にでもできます。

 では、看護師はどのように関わればよいのでしょう。関連因子に介入するため、「なぜ、この患者様は食べられないだろう?」と患者様の心に目を向けます。食べられない理由は患者様に聞いてみなければ分かりません。患者様と向き合って話をしましょう。何か不安なことがあって食欲がないかもしれませんし、どこか痛いところがあって食べられないかもしれません。食べると気持ちが悪くなるのかもしれませんし、太ることを気にして食べないのかもしれません。患者様それぞれで違った理由があることでしょう。その理由(関連因子)に対して、私たちは介入していきます。不安なことがあるなら、その不安が解消できるように、痛いところがあるなら、痛みが軽減できるように…私たちは関わっていく必要があります。

 この事例で言えば、私たちが目指すところは、患者様自身がご飯を食べたいと思えることであって、患者様に「美味しいね」と言って食べて頂けることになるでしょう。とにかく食事摂取量を増やせば良いという訳ではないはずです。当たり前のことですが、どうしても問題自体に焦点を向けてしまう看護師が多いです。あなたの看護は、どちらの看護でしょうか。



 もう1つ、事例を出してみましょう。とても尿にこだわり、トイレに通ってばかりいる患者様がいます。他覚的にみれば、尿量は2000mlを超えているし、泌尿器科的にも問題がないとされています。このとき、私たちはどのように関わったらよいのでしょうか。

 やはり、私たちは「なぜ、そこまで尿にこだわるのだろうか」と考える必要があります。そのためにも、患者様と話をする必要があります。尿意はあるのに思うように排尿できないのかもしれませんし、つねに残尿感があるのかもしれません。尿が濁っているのが気になっているかもしれませんし、尿意がはっきりしなくて失禁するのが不安なのかもしれません。

 尿にこだわる患者様に対して、ついつい「おしっこはいっぱい出ているから大丈夫だよ」なんて説明をして納得させようとすることがあります。でも、それで納得する訳がありません。なぜなら、必ずしも尿量が確保できているかどうかを悩んでいる訳ではないからです。患者様が何を悩んでいるのかを正確に把握しなければ、患者様を癒す看護は行えないでしょう。

 また、尿にこだわる患者様はトイレに通ってばかりいますが、車イスでの介助が必要でした。前回の排尿から1時間も経たないうちにトイレへ行き、「出ない」と嘆いていました。このとき、あなたはどのような声掛けをするでしょうか。「1時間では出ないのが当たり前だから」と説明して安心させるでしょうか。私はそうでした。でも、これは誤った介入であったと思います。なぜなら、患者様はたとえ1時間しか経っていなくても、尿が出るかもしれないと思ってトイレへ来たのですから。ちょっと考えてみれば分かります。尿意があるのに出すことができなかったら、どんなに気持ち悪いことでしょう。このとき、私たちに出来ることは、出ないと嘆く患者様と一緒に悲しむことでしょう。



 これから看護師を目指そうとする人々、すでに看護師として働いている人々に、分かっていてもらいたい。患者様は悩んでいます。何らかの問題を抱えているから入院しているのです。私たち看護師は、その患者様を癒し続ける存在です。患者様の心に目を向けましょう。患者様と向き合って話をしましょう。決して患者様に対して決めつけをしてはいけません。「あの人はああいう人だから」と流してしまわず、「なぜ」を考えていきましょう。患者様の言動には、すべて何らかの理由があるはずです。厄介と思える患者様がいたら、なおさら、なぜそのような言動をするのか考えてみましょう。そして、その原因に対して介入してきましょう。決して表面上の問題だけに捕らわれることがないように。患者様の心に目を向けて看護をしてきましょう。当たり前のことだけど、見失いやすいことでもあります。

トシ



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