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励ますこと

2000/11/26(Sun)

 たいていの場合、誰かがお見舞いに来ると「頑張ってね!」なんて捨てゼリフを残して去っていきます。恩を仇で返すような言い方になりますが、はっきり言ってこの言葉は不快でした。

 「頑張って」と言われると、「これ以上、どうやって頑張るんだ?」という感じで頭にきます。闘病中の患者というのは、本人が望んでいるか否かに関わらず、精一杯に頑張っています。病気による辛さ、検査や治療による辛さ…さまざまな辛さに耐えているのです。だから、どう見ても自分よりも楽そうな顔をした人に、「頑張れ」なんて言われる筋合いはないという感じがします。

 それに、実際に病気と闘ってみると、何もできない自分に憤りを感じます。頑張りたくても頑張り方が分からないのです…特に私の場合、自分ではどうにもできない病気だったので、「留年してしまうのではないか?」という不安に怯えながら、「早く退院したい」と熱望しているにも関わらず、自分では何もできず、手術で治してもらうのを待つだけという感じでした。だから「頑張れるものなら、もっと頑張ってるわ!!」という感じがして、不快な気持ちになりました。

 …と言うことで、パッと現れた見舞い客に励まされることは、決して嬉しくありませんでした。ただ、一度だけ本当に嬉しい言葉を言われたことがあります。

 それは『頑張りましょう』です。これは内視鏡手術を決意したときに、私の主治医が笑顔で言った言葉です。それまでは、『3時間以上かかる手術…嫌だなぁ…辛そうだなぁ…』とばかり考えていたのですが、この言葉を聞いて、『病気と闘っているのは自分だけではないのだ』ということを再認識しました。

 それどころか、『ある意味では、麻酔をかけられて寝ているだけの私よりも、3時間以上も立ったままで集中して手術をするであろうこの医師の方が辛いのでは? それなのに笑顔で頑張りましょうと言ってくれるとは…』とすら考えるようになりました。

 『頑張って』と『頑張りましょう』…似たような言葉ですが、その重みは全く違います。

 また、当然のことながら同じ言葉でも、誰に言われるかによって全く意味が違ってきます。パッと現れた見舞い客に『頑張りましょう』などと言われたら、ぶっ飛ばすかもしれません。それを言ったのが、“患者のために精一杯頑張っている”という印象を強く受ける医師だったので、私は励まされたのです。

 …と言うことで、患者を励ます場合、その言動には気をつけないといけませんね。特にその患者と自分との関係を考慮することが大切です。

トシ



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